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地図情報 Vol.34 No.1 通巻129号 特集:食で辿る地図
〔表紙解説〕
『日本各地 食べもの地図』(帝国書院)福島県
 表紙の地図は、『日本各地 食べもの地図』(帝国書院、2011年)福島県を一部改編したものである。本書は全国各県に残る料理や食材を、ベースとなる県別地図の上にプロットをして、周辺の写真や記事とともに紹介したものである。各地の料理がその土地の風土とどのように結び付いているかを、子どもたちに考えさせるように作成された食育用の地図帳である。以下、福島県を例に風土と料理との結びつきについて一例を紹介したい。
 福島県は、地形的特徴をベースとして「浜通り」、「中通り」、「会津」の3つの地域に分けられるが、それぞれの地域性を反映して郷土料理の種類も多彩である。
 浜通りは、今となっては福島第一原発の汚染水問題によって大打撃を受けたが、メヒカリやコウナゴ、アンコウなど特産の海産物が豊富に獲れた。中通りでは、有名なモモのほか、キュウリなどの生鮮食料生産が盛んである。昔は養蚕が盛んだったので、養蚕暦に従う行事でふるまわれる餅や団子などの伝統料理も多い。
 歴史ある会津地方では、身欠き鰊や棒鱈を使った料理が有名である。冬になると雪の影響で外界との交流が乏しくなった会津では、身欠き鰊や棒鱈などは貴重なタンパク源であった。北方に由来するそれらの食材は、遠く蝦夷から日本海を渡り新潟から阿賀野川を上って会津にもたらされたのであった。また、関ヶ原の戦いの後に近江から移封した蒲生氏とともにやってきた近江の人々の名残も食材に残っている。有名なものは会津味噌として知られる味噌だが、元をたどれば近江の味噌づくりにルーツを見出すことができるという。
 その他、県内全域を通して、山間部では山都蕎麦、高遠蕎麦などのソバや、冬の寒気を生かして凍みもちやあんぽ柿(干し柿)などの保存食が多く残るのも特徴的である。
 震災復興の道半ばの福島県であるが、古より守り伝えられてきた独自の食文化が、今後も全国に知られ、そして食されることで、復興支援のシンボルとなることを期待したい。
(帝国書院 大平原寛)
目 次

■巻頭随筆
・食で辿る地図
■特集 食で辿る地図
・大正月における晴の食文化と風土
・伝統野菜にみる地域名と地図
・地球温暖化と作物栽培適地の変化
・駅弁は日本が誇る食文化
・雑煮(正月料理)に見る地域性−高校生が描く我が家の雑煮
■地図楽
・読図のヒントXⅢ 地図購入のタイミング
・地図と私 −地図への思い
・城と地図 日本最大規模で実施された幻の城郭調査 −明治政府陸軍省築造局城郭存廃絵図(陸軍省城絵図)
■文献紹介
 納豆に砂糖を入れますか? ニッポン食文化の境界線
■紙碑
 五百澤智也先生のご逝去を悼む線■資料室
■巡検・見学会・セミナー
・セミナー 本邦近代民間地図発達史研究
 −製図地図界の巨匠と直伝技術者たち
・巡検「成増・赤塚巡検」武蔵野台地から荒川低地へ
■資料室
・2013年12月号~2014年2月号
(一財)地図情報センターからのお知らせ
・表紙解説
■付録
・「食の文京ブランド100選 おいしゅうございまっぷ」
〔付録〕「食の文京ブランド100選 おいしゅうございまっぷ」(提供:文京区観光協会)