〔付録解説〕日露清韓新地図 明治37年2月訂正再販 大阪 田中宋栄堂
アジア東部地域の地図は、日清・日露両戦役、さらに日中戦争へと続くなかで、民間刊行図ばかりでなく、各新聞社の付録としても数多く作られた。付録として無償で配布された地図は消耗品として戦果追跡などに使われ、残存するものは少ない。
本図は民間の日露戦役直前の刊行図で、千島列島はすべて日本語(漢字)表記され、樺太は片仮名である。1875(明治8)年の樺太・千島交換条約後の姿であり、日露戦役後ポーツマス条約で南樺太が日本領になる直前の形である。また韓国(朝鮮)の一部の地名は、日韓協約後ではあるが、併合後の地名を先取りして書かれているようである。民間図には時としてみられるが、一図中に歴史との時間差があるようである。
(清水 靖夫 (財)地図情報センター理事)