地図情報 Vol.28 No.4 通巻118号 「門前町の地図」
〔表紙解説〕成田山全景(吉田初三郎) 千葉県成田市といえば、空港と並んで真言宗智山派の大本山成田山新勝寺で著名である。本尊は大聖不動明王で創建は平安中期の940(天慶3)年、平将門の乱平定祈願の年に当たる。戦国期の混乱の後、江戸期に復活。今でも関東近県では、多くの参詣人が交通・家内安全などを祈る護摩祈祷のために訪れ、いつも大賑わいの地である(2009年の初詣客約298万人、警察庁発表)。 かつて土産物にもなった鳥瞰境内図は、明治期の銅版・石版物が知られているが、その後の印刷技術・観光の普及によって誕生した鳥瞰図としては、とば圭水(鳥羽章)の「成田」(成田町、昭和10年代)や松井天山の「成田町成田山新勝寺鳥瞰図」(新勝寺、昭和13年)、さらに峯暁雲(庫治)の「成田」(成田町、昭和25年)などの作品もあるが、門前町の町並みも表現した吉田初三郎の「成田山全景」(清聚学院、大正7年)を、ここでは取り上げてみた。 成田山の境内だけでなく、その参道の門前町の様子や旧省線(国鉄・JR)成田線成田駅、また、そこを基点の成田電気軌道(大正5〜昭和2年成田鉄道に改称、昭和19年廃止)の路線が、門前の電車乗降場まで延び絵図風に表示されている。初三郎得意の背景としての富士山や筑波山も描画していて、楽しいものとなっている。なお、初三郎には「成田山絵葉書」(5枚袋入り、昭和15年頃)や「成田山、宗吾霊堂及び香取、鹿島健歩案内」(折図鳥瞰図、昭和16年頃)の作品もある。(藤本一美・地図情報センター研究会員) ■ 巻頭随筆 ■ 特集 湾の地図 |